LEDの光源ユニットを自作し、何とか普通にプリント出来るまでには 漕ぎ着けた ZONE Ⅵ引伸機。
自分にとって初めて4×5のネガを引き伸ばせる引伸機として購入したのだけれど、また それは自分にとって最初の 散光式の引伸機となった。
自分で実際に現物を手にし、使い易い様に工作して 日々使って来た事により 散光式と集散光式の違いが 朧気ながら解ってきた。
でも もしかすると、まだよく解っていなくて 頓珍漢な書込みをするかもしれないし、時期尚早なのかも知れないけれど、現時点で 感じた事を 少し書いておこうと思う。
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僕が初めて 散光式の引伸機を使ったのは、昨年 レンタル暗室においてだった。
ILFORDブランドの 自分で多階調フィルターを 抜き差しせずとも 手元の 操作盤のパネルキーを操作すれば 7セグメント表示の赤い数字が変化して 自由にグレードを変えられる…という物。
今 思い返しても不思議なのだが、あの散光式の光源ユニットの収まったBOXの中は 一体どういう仕組みに なっていたんだろう?
その時は、引き伸ばしたのも1カットだけで 小さいサイズだったので、正直云って いつも使っているfocomatとの大きな違いを見いだせなかった。
僕の買い求めていた ZONE Ⅵ 引伸機は 最初から 光源ユニットが壊れていたので 4×5のシートフィルムは自家現像もこなす様になって あとは引き伸ばすだけ… という段階まできていたのに、どうしたら良いかと 日々 悩んでいた。
ある日 とある方のサイトで 引伸機の光源が LEDで自作出来る事を知り(そのまま 参考にさせて頂いたので 本当は お礼を言わなければならぬ位なのだが…)、突然 道が開けた。「コレだ…」
僕は 潰れたZONE Ⅵ引伸機の光源ユニットをバラして 中を見ていたので、そのカラクリを知っていたが、その方のLED光源ユニットは、まるで其の仕組みを知っていて ただLEDに置き換えただけの様なものだったので、凄い人がいるもんだなぁ…とも思ったし、自分も 同じ様なモノを製作すれば、ZONE Ⅵ 引伸機を 起動出来る…と狂喜した。
そこで、まず ZONE Ⅵ引伸機の光源ユニットの陰極管と同じ様に グリーンとブルーの2系統のラインを持つ LED光源ユニットを自作したが、 通常のネガでは 柔らかく淡い(グレードの低い) プリントしか出来ず、コレは失敗だった。
コレには おそらく2つの理由が有って、まず ひとつ目は 光源の光を生み出す部分の仕組みの違いに依る問題。
ブルーとグリーンの色の 陰極管を 同じ色のLEDに置き換えただけでは ダメという事。
陰極管は元々のその光を生み出す仕組みからして 紫外線に 頼っているので、実際 ブルーやグリーンに見える光の中にも それより波長の短い光や紫外線などの成分が含まれていると思われ、その分 その帯域の光に 反応して (その帯域の光に反応するのは、元々多階調紙に 硬調に焼かれるように調整されて塗布されている乳剤なので)硬調な部分まで極端なスプリットではなく 適度なの階調の連続性を持って 過不足ない階調のプリントが出来る。
それに対して、ブルーとグリーンのLED光源の方は 完全に 紫外線やそれに近い帯域の光を含んでいないので(だから或る意味LEDの方が 目的(とする帯域)がハッキリしていてそれに合った 色(帯域)を 選択しているなら それは効率の良い光と言える。) その分 硬調に焼かれる為の光の要素が何も含まれていない事になり、本来 陰極管やその他の光源(?)では補完される硬調な部分が 抜けてしまっている事になり 常に 全体的に眠い印画が出来る事になる。
もうひとつの軟調にプリントされる理由というのは、その宿命といおうか、そもそも散光式という方式自体が 同じネガからでも 集散光式などに比べて 軟調にプリントされるという事。
写真工業の昔の記事(ここで参考にしているのは、1991年2月号)などを見て確認したが、同じネガからでも 集散光式より散光式の方が 2号相当近く軟調にプリントされるというのは ごく普通にある事らしい。
そもそも散光式は 軟調にプリントされるという事を 僕はある 実際の暗室作業においての問題を通して 体感しているので、ここで紹介したい。
僕は ZONE Ⅵ引伸機を 使い始めた当初、印画の一部分に 毎回 明らかに認められる カブリが有るのに悩んでいた。
それでも、仕方なしに アレやらコレやら 対策を施してみたが… 有るとき思い掛けず、自分が想像していなかったある結論に達した。
上の写真は、去年の暮れ 45FAで撮影時に 広角レンズで無理にアオり 蛇腹でケラれて 画面の隅の部分が全然露光出来ていない(写っていない)ネガを ZONE Ⅵ引伸機でプリントしたもの。
蛇腹でケラれて 何も写っていない(素抜け)の部分は 当然プリントでは真っ黒くなるが、その周囲(ここでは正常な印画との 境界部分)が やけにカブっている。
これは あることを示唆していて、散光式という引伸機に 馴染んでいなかった自分に それがどういうものか 考えるきっかけを与えてくれたのだった。
僕のZONE Ⅵ引伸機。当初はこれらのカブりは 総てあの独特なネガキャリアと その上に 置くようになっている冷光源ユニットの隙間から漏れる光によってもたらされる産物と 思っていた。
だから、そういう事の起こらぬ様に 変にはみ出さぬ様 (ボール紙で!)自分でネガキャリアを作った。(これとは 全然違うが、別な材質で focomat Ⅱcのネガマスクを自作したことも有る。)
自作の光源ユニットも 先端に大きなツバをつけて完全に ネガステージ部分をカバーする様にし、全暗黒にして注視すると ほんの僅かながら光りの漏れが有るのだが、普通の露光時間で焼くプリントのカブる要因としては 殆ど考えなくて良いレベルになった。
にも関わらず、出来てくる印画は 相変わらず カブり続けた。そして 例の上のプリント…。それで僕はやっと理解した。
「このカブりを生み出す光も レンズが連れてくるのだ!」
そこかしこで カブりを生み出す光は もともと コンデンサーが無いため 全く整えられず 散乱してネガのそこかしこに行き渡り ネガの濃度に応じて さらに銀の粒子に散乱させられる。
光は またそこかしこからレンズに集約され(もちろん 引伸機のレンズを繰り出す部分の 黒い蛇腹に入った光 総てが利用される訳では無い) レンズによって 投影され それによって 印画紙の そこかしこに 降りそそぐのだ!
そう考えれば 辻褄が合うし、その他の 巷で云われている 散光式の特徴というのも 上手く説明が付く。
よく散光式は 少々ネガに 傷や埃が有っても プリントした時に 目立ちにくいといわれる。 これは 本当だ。でもそれは 本来 コンデンサーで整えられた光ではネガに遮られて 露光されず 印画紙上では 白抜けになってしまう部分にも 廻り込んで光がやってきて 上手く補完されているとは 言えないだろうか?
一般に 集散光式のプリントよりも 散光式のプリントの方が 調子が柔らかいという事も よく言われる話だ。
でも、逆にバライタの本当の白の輝きを得たい様な場合にも、その部分に それらの 散乱した光の焼き込みが行われて ハイライトの輝きやレンジは 幾分損ねられてしまうのだろう。
そう考えると、この散光式のZONE Ⅵ引伸機を使いこなせていない 自分が云うのも何だが、今の自分には贅沢な望みかも知れないが、4×5が 引き伸ばせる コンデンサーを持つ 引伸機も 1台手に入れたいと思うようになったのだった。
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