2014年11月25日火曜日

2014.11.24. プリント



   先週の日曜日の朝と 振替休日だった月曜日の朝 チョッと ふと思いついた事があって プリント作業をしていた。

   後になってみて 大きな勘違いをしている事に 気が付き 思っていた事についての答えは 今回は 出せなかったのだけれど…






   ここ 1、2年 実は 自分は プリントをするのに 多階調フィルターを 殆ど使用していなかった。

   殆ど去年は 自作のLED光源を使用してプリントしていたし(今年は使っていないが…σ(^_^;))、特別なフィルムを使って撮らない限り、自分のネガの殆どは 2号で焼けていたので、あまり必要性を感じていなかったのだ。

   一昨年、自分がプリントを頻繁にするようになった頃までは、巷で おそらく普通の人々が やっている通り、自分も 焼き付けには 必ずと云って良い程 多階調フィルターを使用していた。

   今年 とある写真展でプリントを 見せていただいた作家さんが 自身のプリントの話を丁寧にして下さり、親切に色々な疑問に答えていただいた折に、レンズの前に 多階調フィルターをかますと 印画の像が 若干甘くなるという事を訊いていた。

   後日、自分は感度はその分高くなるが 自分の使っているマルチグレード紙では フィルターをかませない状態では 2号相当で焼ける事を知っていたので、暗室で 実際に試してみると、確かに フィルターをかました状態と 何もかまさない状態 その都度都度で ピークルーペで ピントを確認してみても、レンズの前に 多階調フィルターを かませた印画の方が、若干 印画の像が 甘くなるのが 見て取れた。

   自分は すでにそれ以前に 引伸機の機種を変更するごと 或いは、引伸しのレンズをかえる毎に 多階調フィルターをセットする ホルダーを 付け替えるのが面倒な事も有り、また 冒頭にも話した通り、殆どのネガは フィルターをかまさずに 2号相当で焼けていたので、フィルターとフィルターホルダーは、部屋の片隅の何処かに追いやられ 忘れ去られていたのだ…。




   一昨年、普段使っている ILFORDのマルチグレード紙以外に、試験的に(?)号数紙がラインナップに加えられ 自分も 11×14のバライタ紙と 8×10のレジンコート紙を買ってみた。

   今年の秋になって、それらの購入から 丸2年の月日が経って 生モノだし そろそろ少しずつ使っていかないとマズいなぁ…と思い始めていた。

   11×14のバライタ紙の方は、購入した頃に 半分位 使ってあったのだが、8×10のRCの方は 未だに開封すらしていない。

   以前 このBlogで何度かふれた事があるけれど、自分は、引伸機の散光式と集散光式という構造の違いに 興味を持って来たし、あまり欲張って濃度の高いネガを拵えても ネガの濃度の高い(銀の粒子が集まっている)部分においては ネガに照射された光は 散乱させられて 露光時間を掛けても 思うように 焼けない事を イヤという程 身をもって痛感させられていた。

   去年、やはり とある写真展を観にいった際に 作家さんが いらっしゃって 色々とプリントについて たずねた処 丁寧に色々と応えて下さり その方は 集散光式の引伸機にナトリウムランプを取付けて プリントしている…という事だった。

   その時は、ハロゲン球や白熱球ではなく 何故ナトリウムランプを使用しているのか 肝心の その理由を尋ねるという事まではしなかった。(その時は、ハロゲン球や白熱球よりも 電力から 光エネルギーへの変換効率が良くて 出力は大きくても 熱の発生が少ないから…等の理由だろうか…と勝手に考えていた。)

   その後、その作家さんのプリントが素晴らしく また有名な方だった事も有り、暫く『ナトリウムランプ』という言葉が頭の中に残っていた。

    ある日 ネットで『ナトリウムランプ』について調べてみると、今の世においては ナトリウムランプといっても、改良されて様々な演色性を持ったものが存在するようだ…と云う事を そこで知ったのだけれど、自分の中で 一般的に ナトリウムランプと云われて 馴染み深いのは、トンネルの中などの照明に使われている オレンジ色や黄色に見える光だ。

   ネットでは、その橙黄色の光の効能と云おうか 他の光源に比べて 優れた特徴が何点か列記されていたのだけれど、その中に一点 気になる記述が有った。

   それは、「微粒子による光の散乱は、長波長になる程 小さいので、他の照明に比べて 空気中の粉塵などによる散乱の影響を受けにくく 照明の有効範囲が広い」という事。

   正直云って 自分がそれまで抱いていた感覚と違う…(勝手に思っていたのと正反対だ…)というのが 最初に頭に思い浮かんだ事だった。

   何か 波長が短い方が 小さな隙間もすり抜けて行きそうな気がするし、深海になると 青くなるのも 途中で それより長い波長の光は 散乱させられて届かないからだと思い込んでいた。(実は 海に潜ると 青くなっていくのは 違う理由かららしい。云われてみれば、朝焼けや夕焼けが赤やオレンジなのは 日中より太陽の光が浅い角度で降り注ぎ 太陽が天頂附近にある時よりも 光が大気圏の中を進む距離が長くなるので その間に 大気中の微粒子によって 波長の短い光ほど散乱させられてしまった結果だというのは 訊いた事がある。)

   波長の長い光ほど 微粒子によって散乱されにくい…と云う事実を知って、疑問というか 自分の中に一つ試してみたい事柄が思い浮かんだ。

   それは、波長の長い光と短い光で同じネガをプリントした場合、印画に差が出るか? と云う事。

   でも、気を付けなければならないのは、巷に溢れているマルチグレード紙を使っても マルチグレード紙は そもそも それぞれ 異なる波長の光に反応する幾種類かの乳剤が 一つの支持体に塗られていて それぞれの乳剤が 恐らく異なったグレードを担っていて、00号から5号のフィルターを用いて それらのある特定の領域(グレード)を選択したり、スプリットグレードの技法のように 意図的に 複数のフィルターを用いて 2号、3号といった馴染みのグレードに捉われずに 印画を創作出来る様になっている。

   今回の僕の試みを果たすには、普段は 恩恵を受けているその仕組みが かえって障害になってしまっている。

   そこで、冒頭の多階調フィルターと号数紙の出番となる。2号の紙に焼き付けるからには 塗布されている乳剤に有効な範囲内なら どんな波長の光でも 2号相当のグレードに焼ける筈だし(我ながら強引な解釈だ…)、逆に号数紙では使う事のない 多階調フィルターを用いてある特定の帯域(どの位の巾を持つのか知りもしないのだが…) の光だけを選択して 焼き付けをして、波長の短い方と長い方の結果を 見比べよう…という訳だ。

   何はともあれ、焼いてみた…





   極端な話だが… もし結果に違いが有るなら 一番差が付いて分かりやすいだろうと思って、それぞれ 00号と5号のフィルターをかまして焼き比べてみた。

   結果としては、パッと見て スグ判る程の差は見い出せなかった…。もっとも、それもその筈 冒頭で いきなり書いてしまった通り、今回の僕のやり方そのものが 全く的外れで間違っているのだから…。

   チョっと書き進めてしまったので、スクロールが面倒かも知れないけれど、もう一度 冒頭の写真を見て戴きたい。僕は何故かレンズの下に 多階調フィルターポケットを取付けてしまっている事が判る。

   これでは 意味が無い。この時点で 多階調フィルターをかましたところで、フィルターポケットに到達した光は すでに ネガを通り抜けて来ているのだから、既に銀の粒子によって散乱させられてしまったモノも一部 降り注いでいるかも知れないが、その大半は キャリエ効果の影響を受けずに 印画紙に辿り着いた 選ばれた光たちなのだから…。






   今回は、結果的に こんな意味の無い事をしていた事になるけれど、何枚ものプリントをしている中で 幾つか気付かされた事が有った。

   一つは、或る程度 事前に予測をしていたつもりだったのだが、自分が思っているのよりも遥かに00号のフィルターを通した光だけでプリントをするのは、露光時間が掛かると云う事。

   上の写真が そのプリントなのだけれど、何もフィルターを付けずに ダイレクトに焼くと ベース露光 僅か8秒だったプリントが(通常そこから 更に何段階かの焼き込みを加えるけれど…)、00号のフィルターで 同じ位のベース露光を しようとすると、何と720秒(12分!)も掛かってしまう。

   そもそも、コレだけ感度が低いと云う事は、この印画紙の設計においては その帯域の光を使う事など 念頭に置かれていないと云う事なのだろう。

   でも、720秒の露光でも普通にプリントする事が出来たし、そんなに長く露光に時間を掛けていると カブりはしないかと心配だったが、特にそういった事も感じなかった。






   









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